【大紹介5】完結「富嶽四十六景」37〜46景

葛飾北斎の浮世絵
「富嶽三十六景」と言われますが、
好評につき10枚追加されています。
なので「富嶽四十六景」
最後の10枚の紹介です。

歴史や関連リンクなども含めて
一枚一枚見ていきます。

この記事では
愛知や山梨側から見た北斎の富士山の版画、
37〜46番を紹介しています。

版画が好きな人、
江戸時代が好きな人だけではなく、
北斎の大胆なデザインは
デザインの参考にもなりますので、
デザイナーさんにもオススメ記事です。

[完結編]北斎「裏」富嶽四十六景

これまでの「富岳三十六景」リンクはこちら。

↓基本場はこちらで。
【大紹介】葛飾北斎「富嶽三十六景」の1〜10景

↓東京から見た富士山
【大紹介2】葛飾北斎「富嶽」11〜16景

↓茨城、千葉、神奈川から見た富士山
【大紹介3】葛飾北斎「富嶽」17〜26景

↓神奈川、静岡から見た富士山
【大紹介4】

[裏]「富嶽」37〜46景

江戸時代から一般的に、
甲州(山梨)から見える富士山を

「裏富士」
と呼んでいました。

ですので、最後の10枚のほとんどが
甲州からの景色であったので、
追加で描かれたこの10枚は「裏富士」とも言われます。

予備知識として行政区分。

駿州は「駿河国(スルガノクニ)」の別称。
現在の静岡県。

今では同じ静岡県でも
大井川を挟むと、
遠州/遠江国(トオトミノクニ)になります。

愛知県西部が尾州/尾張国。

長野県が信州/信濃国。
山梨県が甲州/甲斐国

37.橋のない大井川「東海道金谷ノ不二」

東海道 金谷ノ不二

この絵の川は、
東海道最大の難関と呼ばれる大井川。

江戸と
徳川家康の隠居していた駿府城の防衛のため、
架橋も渡し船も禁止されていました。

その代わり川会所を設置し、
川越人夫が常駐し、川の深さを測り、
人力で川を渡る手伝いをしたそうです。

桜の花が描かれているので、
早春ですね。

北斎は川の水も冷たかろう、
と言うことを言いたかったのでしょうか?

この絵の中で気になるのが
「笠」の「◯」の並び。

なんだか機械的に運んでいる様な、
次の広重の人間味ある雰囲気とは違います。

歌川広重もまた違う角度から
この様子を描いています。

それにして危険な職業に感じますが、
幕府が設置したため、今なら公務員の立場。
安定した人気職業だったそうです。

38.直線と富士「遠江山中」

遠江 山中(トオミサンチュウ)

人工的な物をはっきりと区別させる、
北斎の直線的な図と富士山の組み合わせ。

これまでも、
「5.本所立川」

「14.武州千住」

などで見られましたが、

今回は垂直ではなく斜め。
その間から富士山が見えますが、

富士があって
この材木の切り出しがあるのではなく、

この材木を描きたくて、
富士山がある様に思います。

なぜなら、
富士山がこの材木に合わせ形を変え
尖っている様に思うからです。

やはり北斎は富士山を描くよりも、
それを取り巻く人々に注目しているのが分ります。

また別の要素、
煙と雲が組み合わさり、
人と富士山が自然に混じり合います。

中央の人の「◯」
赤ちゃんの頭の「◯」
意図的に「◯」を入れていますよね。

39.優雅に富士見「東海道吉田」

東海道 吉田

東海道34番目の宿場吉田宿は
現在の愛知県豊橋市。

そこにあった富士の眺めの良い
「不二見茶屋」の人々の様子。

富士山を見る女性は籠に乗ってきた様なので、
身分が高いのでしょう。

手前の草履を叩いて履きやすくしている人足が
過剰に瘦せ細て描かれていると思います。

貧富の存在を皮肉めいて入れている
と、思うのは考え過ぎですか?

40.大胆な◯に富士「尾州不二見原」

尾州 不二見原
尾州は愛知県西部、
かなり離れたので富士山も小さくなりました。

その小さい富士山を効果的に描くために
樽の中で木を削る職人を描き、
この大胆な構図で
自然に富士が主役の一枚にしました。

様々な版に
エッセンスとして使っていた「◯」。

ついに「◯」を大きく描きましたね。

41.裏富士は右上がり「甲州犬目峠」

甲州 犬目峠

wikimediaのこの写真は、
富士山の色が赤一色で刷られていますが、
他の確認できる物全て、

山頂に向かい
赤から青に色が変わっています。

↑メトロポリタン美術館所蔵の一枚
The Inume Pass in Kai Province

人を小さく描くことで、
この峠が雄大であることが分ります。

そして山の上の2人の旅人の
笠が「◯」ですね。

のどかな図ですが、
富士と峠の間に描いた真っ白な部分、
かなり大胆な省略を自然にしています。

構図が、
富士の西側に来たからか、
左から右へ盛り上がる、
「神奈川沖浪裏」の反対になっていますね。

最後に紹介する
「46.身延川裏不二」もこの構図の一つと思います。

42.北斎のファンタジー「甲州三坂水面」

甲州 三坂水面

伝えたいことのためには
大胆な誇張を辞さない北斎の絵でしたが、
この「甲州三坂水面」はその究極。
ファンタジーです。

これまで描いていた富士山は
のっぺりとしている山肌が多かったのですが、
今回は細かい岩山を描いています。

一転して湖に映った富士山。
これを「鏡富士」と言いますが、

単純化しただけではない、
全く違う雪の富士山を、
本来水面に反射するには不自然な位置に描いています。

解釈は沢山ありますが、
夏と冬の富士山に集落が挟まれ
守られている様です。

43.旅人の朝は早い「甲州伊沢暁」

甲州 伊沢暁(イサワノアカツキ)

暁(夜明け)の富士が美しく刷られていますが、
↑これはちょっと違う様です。

↓ホノルル美術館所蔵のこちらの方が、
本来の色が出ています。

早朝の
甲州街道にある石和宿の
朝早く旅立つ人たちを描いています。

早朝が分るのは、
富士の頂上の白い部分を赤く染めています。

日が昇ってきているのが分る様に、
宿の藁葺き屋根の片側が濃く影になっています。

何よりも美しいのは、
川と橋と霞と雲と全てが一体となって、
不思議な空間の様に自然と繋がっています。

右手前に岩を描くことで、
高い位置から見ていることが分りやすくなりますね。

他にも
「19. 常州牛堀」

「24. 相州七里浜」

「30. 駿州片倉茶園ノ不二」

これらの右端も
同じ効果のある岩などが描かれています。

44.二本の松「信州諏訪湖」

信州 諏訪湖

中央のほこらの屋根が
富士の形に似せています。

それともう一つ三角。
2本の松が二手に分かれて、
右の一本の枝が垂れ下がり三角を作っています。

諏訪湖と富士は
歌川広重も描いています。
広重の諏訪湖にも2本の松が描いてあります。

どちらにも描かれている左側のお城は
諏訪高島城です。

中央に木がどーんとある構図はこれも。
「29.甲州三島越」

45.父子にも注目「甲州石班澤」

甲州 石班澤(カジカザワ)
初版は藍色一色だったそうです。
↓それがこちら。

この釣り糸で三角が出来上がっているのは、
見たらすぐ分りますが、

ここで見たいのはシンプルな富士のライン。
このシンプルなラインは
「35.駿州江㞍」で見られます。

同じシンプルラインですが、
「甲州石班澤」はこぶが二つ出来ています。

これは釣り人とその横にいる
子供に対応していると思いませんか?

親子で仕事をする2人に
北斎が思いを寄せた様な気がします。

46.川が階段の様「身延川裏不二」

身延川 裏不二
日蓮宗の総本山、
身延山久遠寺へ向かう人たちの図です。

手前の岩から木にかけて
「神奈川沖浪裏」の反転した様な構図になっています。

身延川が水量が多く荒い川だとしても、
川とは思えない大胆な描き方。

言いたいことをシンプルにして描く北斎であるならば、意味がありそうですよね。

↓こちらのブログの推測なら納得の描き方です。
身延川を階段のように描いた北斎さんの思いを推理

富士がよく見える場所なのでしょう、
歌川国貞の「久遠寺の地図」にも
富士山が描かれています。

葛飾北斎「富嶽三十六景」+10のまとめ。

46枚解説するぐらいすぐ!
と思い始めましたが、

いやいや、

見れば見る程気になることが出てきて、
他の北斎の絵も全部分析してみたくなりました。

今後も新しい見解や、
情報が分りましたら追加して行こうと思います。

もしここまで全部読んで頂けた方がいたら、
お付き合い本当にありがとうございました。
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【大紹介】葛飾北斎「富嶽三十六景」の1〜10景
〜東京から富士山編1〜

【大紹介2】葛飾北斎「富嶽」11〜16景
〜東京から富士山編2〜

【大紹介3】葛飾北斎「富嶽」17〜26景
〜茨城、千葉、神奈川から富士山編〜
世界一有名な日本の絵「神奈川沖浪裏」が入ってます。

【大紹介4】「富嶽三十六景」後半!27〜36景
〜[富士山大接近]神奈川、静岡、山頂編〜
北斎の富士山と言えばの「赤富士」の
「山下白雨」の説明あります。

この記事は
【大紹介5】完結「富嶽四十六景」37〜46景
〜山梨から裏富士編〜

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