浮世絵の犬だらけ[わんわん]ボストン美術館コレクション

今回は浮世絵の犬に注目して
記事を書いています。

世界一浮世絵の所蔵数が多い、
ボストン美術館の中から、
「犬」の描かれた浮世絵をピックアップして、

江戸時代の風習と絡め
楽しめる記事となっています。

英語のタイトルは
全てボストン美術館の
それぞれの浮世絵のサイトにリンクを貼っていますので、
そちらでも楽しんで下さい。

浮世絵の「犬」で分かる江戸時代

世界で一番
日本の浮世絵を所蔵しているのが、
アメリカのボストン美術館。

なぜなら、
ボストンは大森貝塚を発見したことで有名なモースの出身地。

モースが日本の美術のすばらしさを伝えたことで、
美術コレクターが日本へ行き、
浮世絵などの多くのの日本美術を買い付けしてきました。

奇しくも戦渦を逃れ、
日本よりも浮世絵の所蔵数が多くなったのでした。
Museum of fine arts Boston

犬と江戸の人々

町人といる浮世絵の犬を見ていると、
愛らしいというよりも、ちょっと情けない…
ひょろひょろの犬が多いですね。

描き方もあるでしょうが、
実際、栄養が今程ないでしょうから、
江戸時代の犬はこのぐらい細かったのでしょう。


Woman, Child, and Dog
「親子と犬」1819 文政2年
歌川 国貞(三代目歌川豊国)
Utagawa Kunisada I (Toyokuni III) 1786–1864


Woman with Umbrella and Dog in Snow
「雪中に傘をさす女性と犬」
1815–21(文化12–文政4)
歌川国丸 Utagawa Kunimaru 1793–1829
初代歌川豊国の門人

美人画は素敵ですが、
犬の絵は得意ではないということでしょうか?
首が長いですよね。
一枚目の犬も、犬?と思わせます。


Fishmonger and Dog
「松魚(かつお)売りと犬」
岳亭春信 Yashima Gakutei 1786?–1868
魚屋北渓と葛飾北斎の門人

この犬、ルーニー・テューンズの
コヨーテみたいですよね。

浮世絵の犬を見ると、
江戸時代の犬は日常に
野犬ともペットとも分からず存在している感じですね。


Blind Men and Dogs
坐頭と犬
歌川豊国 Utagawa Toyokuni I 1769–1825

この犬達は野犬っぽいですね。
やはりみんな細いですね。


Three Dogs Look LIke Nine, Two Dogs Look like Four
「徳用向犬の三わり 
三びきの犬九ひきにみへる 
二ひきのいぬ四ひきのみゆる」
1847–52 (弘化4–嘉永5)
歌川国芳 Utagawa Kuniyoshi 1797–1861
初代歌川豊国の門人

暴れた犬達が
易者のテーブルを倒している情景ですが、

歌川国芳は多くのパズル的な
浮世絵を沢山残している絵師です。

沢山いる様に見えますが
本当は何匹いるのか、
どの体とどの頭が繋がっているのか?

分かる様な分からない様な、
見ている人に頭をひねらせます。

でも絵として不自然さがないところがすごいですよね。

歌川国芳の有名な一枚↓

国芳は犬より猫の方が有名。
紹介したいけどきりが無いのでまたいつか。

江戸時代のカレンダーはややこしい

江戸時代は
旧暦(太陰太陽暦)を使っていたのですが、

これは一ヶ月何日間か?
一年が何ヶ月か?割り出すのが複雑。

勝手に庶民が計算すると間違いが起こるので、
カレンダーの販売は幕府により禁止されていました。

それでもお上の目を盗み、
庶民達は浮世絵に数字を隠し入れ、
お正月の年賀状の様に、
カレンダーを交換していました。

私には分からないのですが、
これらにも数字が隠されているということなのかな?


Dog, the Eleventh Month
「十二支 犬 霜月」1770s
石川豊雅 Ishikawa Toyomasa 1770–1780
石川豊信の門人


Dog, from the series Fashionable Twelve Signs of the Zodiac
「風流十二支 戌」 1770–72 (明和7–安永1)
礒田湖龍斎 Isoda Koryûsai 1735–1790

[狂]斎百図

河鍋暁斎
Kawanabe Kyôsai 1831–1889

幕末の浮世絵史、
名前を「狂斎」とすることも。

そして、その名前に相応しいお姿。

しかし、犬に特化すると普通でした。
人々があまりにもユニークですね。

The Fruit of the Tree Is Known from Its Flowers
狂斎百図
「実のなる木は 花からしれる 犬とさる」

Flower on a Withered Tree
狂斎百図 「かれ木ノ花 犬の川ばた」

When a Married Couple Fight the Dog Won’t Take A Bite
狂斎百図
「夫婦けんくはいむもくわぬ」
「むくろしゅはみがいても白くならぬ」
「我がゑい楽の釜たらい」

架空の物語の犬は毛並みがよい

浮世絵は時に挿絵でもありました。

吉田兼好の徒然草を元に描いた絵の、
鷹狩りの犬は想像の中にあるのでしょうから、
他の浮世絵の犬達より毛並みが良さそう。

If You Use a Dog Trained to Hunt with Small Hawks for Hunting with Large Hawks…
「徒然草第174段」
「小鷹によき犬。大鷹につかひぬれば」1831–2(天保2–3)
魚屋 北渓 Totoya Hokkei 1780–1850
葛飾北斎の門人

Dog (Inu): Hata Rokurôzaemon, from the series Heroes Representing the Twelve Animals of the Zodiac
「武勇見立十二支 畑 六郎左衛門 戌」
1840 (Tenpô 11)
歌川国芳
Utagawa Kuniyoshi 1797–1861

破天荒な絵師、
歌川国芳は赤穂浪士や水滸伝などの
物語の絵も沢山描いています。

この犬は国芳の描く猫同様、
愛らしい動物として描いていますね。

The Dog of Lord Fujiwara Michinaga, the Regent of the Buddha Hall
「宇治拾遺物語 御堂関白殿の犬」
1830 (文政13/天保1)
岳亭春信 Yashima Gakutei 1786?–1868

これも想像の犬なので毛並みがよいですね。

架空の話しでは犬が奇麗になるということは、
他のやせ細った犬達は
江戸時代のリアルだということですね。

犬だけ浮世絵2枚


Dog, from the series Fashionable Twelve Signs of the Zodiac
「風流十二支」 戌 1773–75(安永2–4)
礒田湖龍斎 Isoda Koryûsai 1735–1790

これもカレンダーかもしれませんが。
子犬はどう描いてもかわいいですね。

News Report on the Fighting Dogs of Changzhou in China
「常州闘犬之新報」1872 (明治5)
歌川 芳虎 Utagawa Yoshitora 1836–1887
歌川国芳の門人

闘犬を描いています。
絵は軽いタッチに見えるのに、
傷つけ合うシーンなど、かなりえぐい描写。

犬と遊女たち、花魁は[狆]を飼う?

浮世絵は遊女を描いた物が多いです。

遊郭は独特な習慣があったので
少し知っていると
浮世絵観賞の手助けになります。

「禿(かむろ)」
7〜8歳頃から遊郭に見習いに入る
売られた子や遊女の子。

「新造(しんぞう)」
まだお客さんを取っていない14〜5才の女郎。

「飯盛女(めしもりおんな)」
旅籠でお客を取る遊女の隠語。

「夜鷹(よたか)」
道でお客を取る遊女。

そして、遊女の最高位が
「花魁(おいらん)」です。

Courtesan and Two Kamuro Playing with a Dog
「遊女と禿(かむろ)と小犬」 1766 (明和3)
鈴木 春信 Suzuki Harunobu 1725–1770

禿が手を出しているのは、
犬のえさを貰おうとしているのか?
お駄賃のおねだりかな?


A Woman Emerging from the Bath and a Black Dog, from the series Comparison of the Charms of Alluring Women
「色競艶婦姿」
浴後の女と黒犬 1781(安永10/天明1)
鳥居 清長 Torii Kiyonaga 1752–1815
鳥居清満の門人

この小さい黒い犬に、
赤くて太い紐を首に結び、
スズが付いるのが、何とも可愛らしいですし、
ペットとして犬が可愛がられていたことが分かります。

Courtesan and Dog in Garden outside a Party Room at Night
「夜の庭に遊女と犬」 1770
礒田湖龍斎 Isoda Koryûsai 1735–1790

夜も犬は放し飼いになっているのですね。


Young Woman Playing with Dog
「美人と犬」
礒田湖龍斎 Isoda Koryûsai 1735–1790

遊女とも何も書いていませんが、
髪型から花魁だと思われます。
次の絵もそうですが、

花魁クラスになると、
貴重な犬を飼えるが窺えます。


Courtesan and Pekingese Dog at New Year
「正月の遊女と狆」
魚屋 北渓 Totoya Hokkei 1780–1850

最後2枚の遊んでいる犬は
「狆(チン)」ですね。

ルノワールとマネの犬の絵で
狆を紹介しました。

フランスの日本美術コレクターが
わざわざ手に入れた犬が「狆」でしたので、
貴重な犬種だったと思います。
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サイト内関連リンク
5つの時代の「犬の絵画」
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浮世絵の中の犬たちまとめ

浮世絵の所蔵数が、
日本よりも多いボストン美術館のコレクションから
犬が入っている浮世絵を選抜いて紹介しました。

浮世絵と一括りに刷るともったいない、
様々な角度から見ると、
時代背景も窺えて
絵画観賞の幅が広がりますよ。
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サイト内関連リンク
5つの時代の「犬の絵画」
3枚の[閲覧注意]ルーベンスはフランダースの犬だけじゃない
やっぱり猫の絵画が好き。名画の中の猫。
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