書道作品は「現代アート」なのか問題

「書家」と呼ばれる、
書道をアート作品として活動をしている方は、
沢山いらっしゃるのですが、

彼等は「現代アート」なのか?

「現代アート」と「書道アート」に
違いはあるのか?

その疑問には、
既に書道を「現代アート」にしたアーティスト
「井上有一」を通し、

今回の記事でこの違いを見ていきます。

自身も絵を描き、書道を習い、
書道とアートの境目を模索する私が記事を書いています。

書道作品を「現代アート」にした井上有一

「書道」は「字」
「現代アート」は「字ではない」

では「字」とは?

「字」もしくは「文字」を見ると、
その字の意味を人は考えます。

表面的「絵」自体には意味はありません。
見た人が意味を感じ取ります。

この狭間を抜け、
「字」から「字」ではない
意味を生み出した作品として
認められたアーティストがいました。

井上有一 (Yuichi Inoue) 1915-1985

小学校の教師をしながら、
生み出した作品の根源には戦争体験がありました。

1945年(昭和20年)3月10日
東京大空襲により、
勤めていた小学校が空襲に遭いました。
引率していた生徒達を全て失い、
自身は仮死状態から生還したそうです。

その体験から生まれた作品
「噫横川国民学校」
群馬県立近代美術館 Facebook

東京大空襲/噫横川国民学校

NHKの特集に対する記事、
この書の背景がとても分かりやすく書いてあります。
NHK・BS「英雄たちの選択」 井上有一「噫横川国民学校」の書

このような背景がこの後、
前衛書道と言われる世界を作り上げます。

この作品は空襲から33年後に書かれました。
それだけ、かんたんに表現できる経験ではなかったのです。

井上有一に影響を与えた人々

教師であった井上有一が、
書家になり、現代アート作家となったのも、

多くの出会いと、
影響があったからでした。

書の師は既に現代アーティスト

書家として師事をしたのが、

上田桑鳩(うえだ そきゅう)
1899−1968

1951年、日展へこちらの作品を出展し、

論議が起こりました。
確かに、書なのか?絵なのか?
そもそも「愛」自体の形が見えない。

まるでデュシャンの「泉」と同じ事を
書の世界で行っていたのですね。
NY在住の私が考える「現代アート」とは何か?

日本経済新聞のあの字は
上田桑鳩が書いてました。

書家、柿沼康二が
そのすばらしさを伝えてくれている記事です。
「日本経済新聞」の屋号 書家 柿沼康二

長谷川三郎とイサム・ノグチ

1950年代イサム・ノグチは
日本に滞在し活動をしていました。

北大路魯山人の邸宅内にアトリエを持ち、
この頃長谷川三郎とも親交を持ちました。

さらにそこへ
井上有一も加わる事があったのです。

抽象画家として先端にいた長谷川三郎と、
国際的な彫刻家イサム・ノグチとの親交が
大きな影響を与えています。

1955年の作品は現代芸術の影響を大きく受け、
和紙ではなくクラフト紙。
墨ではなくエナメルで

書く…のか、描くのか、

この頃は文字を書かない選択をしていた様です。
Work No.1 1955

文字を書かない選択をした後、
描き続けているうちに、
やはり文字という欧米にない
すばらしい物を捨てる必要はないと、
文字回帰して行ったのです。
Fushigi 1956

海上雅臣の評論

美術評論家の海上雅臣。

井上有一に関する本をまとめ、
評価をする事で井上有一の評価を高めました。
<著書>
「井上有一・東京大空襲」
「井上有一・貧」
「評伝 井上有一」
「世界名画家全集 井上有一書法是万人的芸術(中国語2009年)」
「井上有一書法是万人的芸術(中国語2012年)」

「井上有一」で検索した時に、
中国語のサイトが沢山出てきたのは、
この方の力なのかもしれないですね。


↑中国語ですが、井上有一が
描いている(書いている)姿が見られます。

井上有一の書に出会う

書であり、現代アートでもある
井上有一の作品は、

美術館でも出会えますが、
ギャラリーで購入する事もできます。

ニューヨークの井上有一

メトロポリタン美術館が
唯一所有する井上有一の作品。
寒山“Kanzan” (Cold Mountain),1966
書道と抽象画の域を超えた作品と紹介されています。

1954年、
ニューヨーク近代美術館 (MOMA)で
日本の書道展が行われ
井上有一も知られる様になりました。
Japanese Calligraphy 1954

日本の美術館

国内の美術館では、
京都国立近代美術館には
63点もの井上有一の作品が所蔵されています。
所蔵作品検索 井上有一

東京国立近代美術館には1点、
骨 1959

国立国際美術館に3点所蔵されています。
愚徹 (1956)

現代アートとして買うには

井上有一を扱うギャラリー

ネットギャラリーのArtsy
金額は問い合わせになっていますが、
どの様な作品があるのかを見るだけでも参考にして下さい。
Artsy Yuichi Inoue

過去の企画展、参考までに。
LADS GALLERY

現代の書道家アーティスト

現代アートと書道家の違いは、

文字を使い、その文字を表すための書と、
文字を使い、そのものが表現であること。

かと、思うのですが、

自分の書道はまだ文字を書くだけで精一杯。
表現の手段に「書」を入れられる日が
人生の中で来るのだろうか?

活躍している書家の方を見ると、
書道家であり、書家であり、
アーティストであり、パフォーマーでもありますよね。

本人が作品に文脈を持たせ、
現代アートの世界に入ろうと思えば入れるし、
書道の世界で貫くのもあるのでしょう。

何となく、書の世界では、
高値でコレクションされるよりも、
お寺に奉納されている方が価値が高い気もします。

これも芸術のルールに入れると、
宗教画のくくりでもありますよね。

岡本光平

公式サイト
多くの作品が各地のお寺に所蔵されています。
アメリカのエール大学美術館にも所蔵されているそうです。

武田双雲

公式サイト
メディアに多く出られているので言わずと知れた方ですが。
ネットギャラリーのTagboat似て、作品を購入できます。
Tagboat Souun Takeda

このギャラリーを見ていて思ったのですが、
アートとしての「書」は
象形文字の一面もありますね。

アートと一言で括るには書の世界は
意味合いが広いのかもしれません。

柿沼康二

公式サイト
「書はアートたるか、
己はアーティストたるか」

この命題のもと活動されているそうです。
この挑む姿勢が「現代アート」ですね。

祥洲

公式サイト
伝統的表現と抽象的表現を
きちんと分けて考えていらっしゃいます。

だからこそか、
抽象表現の大胆さがある様に見えます。

紫舟

公式サイト
お姿も美しく、ただのファンです。
この方を知って書道を始めました。

書道作品は現代アートかまとめ

小学校の先生をしながら書家であった
井上有一

イサム・ノグチなど
現代アート作家とも交流があり、

「書」を「現代アート」として認知される
パワーのある作品を作り続けました。

漢字を知らない欧米社会でも、
その力を感じられる表現を手に入れたのです。

その活動の末、
戦争で自身も仮死状態から生き残った
東京空襲から33年後、

東洋の「ゲルニカ」とも言える作品を残しました。

その作品「噫横川国民学校」
は、見た目の表現だけではありません。

言葉には意味を持ち表現をさらに強調します。

書のアートは、
現代アートのさらにその先を行ったアートとも言えるのかもしれません。

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